母と盆踊り 〜 産経新聞 夜明けのエッセー
                      三平 貴美子(61)
                      大阪府池田市

 「今日な、ものすごく良いことがあってん」
 「何?どうしたん?」
 7月のある夜の娘との会話。私はその日あったことを幸せな気持ちで話し出した。

 私は3月に定年退職を迎え、それを機に地元町内会の婦人会の役員となった。そしてその日、初めての役員会に参加した。そこで8月に行われる盆踊り大会についての話し合いの中でのこと。

 「あんたのお母さん、踊り好きやったもんなあ。上手やったし」。23年前に亡くなった母のことをよく覚えていて、声をかけてくれた人がいたこと。

 「役員さんは、踊り手となって盛り上げてください」。母が大好きだった盆踊り大会に、私も出られるということ。

 「浴衣ありますか?町内会のおそろいのもの」。ないと答えたものの、もしかして、と思い、形見の衣装ケースを探してみた。

 「ありますようにって拝みながら開けたら、入っててん」

 話しながら、胸の奥から熱いものがこみ上げてくるのがわかった。ふと娘を見ると、娘の目にも熱いものが光っている。

 「よかったなあ、ママ。おばあちゃんのこと覚えてくれてる人がいて。うれしいわ」

 それを聞き、話し出す前よりもっと、私は幸せになった。

 そして8月5日、6日。私は母の形見の浴衣を着て、母の大好きな盆踊りを踊ることができた。

                   産経新聞 8月22日