校長先生 〜 夜明けのエッセー
平成30年1月25日
                竹本節子(68)
                大阪府東大阪市 

 新学期が始まって間もないある朝、ゴミ出しをしていると、道路を隔てた小学校から懐かしい大きな声が聞こえてきた。声につられて正門まで行くと、やはり懐かしい後ろ姿があった。声の主を尋ねると校長先生だった。39歳の次男が6年生の時の担任の先生の現在の姿。息子の恩人である先生。

 あれは、6年生の修学旅行の前のこと。楽しみに準備をしていた息子が突然、修学旅行に行きたくないと言い出し途方に暮れた。学校では人一倍活発な息子は夜尿がひどく、人に知られたら困る一番の悩みだった。私は思い切って先生に相談に行った。深刻な顔の私に、「なぁんやお母さん、そんなことで悩んでいるんですか。僕に任せて下さい」とおっしゃった。旅行当日、祈るような気持ちで、心なしか少し元気のない息子を送り出した。一泊して帰宅した息子の顔を恐る恐る見ると、開口一番「僕、おしっこもらさんやったぜ!」。さらに口をとがらせて「先生は、夜中の11時頃、電気を付けてみんなおしっこにいきなさいと、起こしてん」と。

 現在、東京で働いている息子に、担任だった先生が校長先生になって同じ小学校に戻られていることを伝えた。「すごいな!」とメールが来た。私があれだけ悩んだ夜尿を修学旅行の一泊でぴたっと止めてくださった。あれ以来、一度も夜尿がないことが「すごい」と言いたかった。

 息子は、私が先生に相談に行ったことをいまだに知らない。今朝も、校長先生は学童の通学路を自転車で巡回しておられる。