笑顔の魔法〜つきBONの「誤解をおそれず言わせてもらえば」
ほっこりした話


 珍しく地元紙にいい話が載っていたので紹介する。

  「笑顔の魔法」 熊本県 長友 奈奈(36)


幼い頃、自分は世界一幸運な子どもだと信じていた。
 
それには理由があった。
 ミッキーマウスの目覚まし時計。
 母がくれたものだ。
「奈奈、この目覚まし時計にはね、魔法がかけてあるの。この目覚ましを自分で止めて起きた日には、必ずいいことが起こるのよ」
 魔法の物語が大好きだった私は、とび上がって喜んだ。
 
次の日から、私の人生はひっくり帰った。
通学路でいつも吠える犬が吠えない。
 席替えでは仲のいい友達の隣になるし、運動会や遠足の日は必ず晴れた。
この目覚まし時計があれば、私はずっと幸運でいられる。

ある朝、ベルが鳴る前に目を覚ました。
 見てみると、目覚まし時計が止まっている。
「壊れたんだ」
私は真っ青になった。
 
その日から今まで溜まっていた不運が私のドアをノックした。
 高校受験では受験票をなくす。
入学式の当日に転んで前歯を折る。
バレンタインでは、チョコを入れる靴箱を間違えるという失態までした。
 母のかけてくれた魔法は解け、私は世界一幸運な子どもから普通に運の悪い人になってしまった。

そんな私も、不運続きだったわけではない。
 結婚したい、と思える人に出会えたからだ。
 プロポーズされた時、自分の運のなさとその理由を伝えた。

 新居が決まって引っ越した夜、私の人生は再びひっくり返ることになる。
 新生活のお祝いに、と彼がプレゼントをくれた。
 ミッキーマウスの目覚まし時計。
 母からもらったものとデザインは少し違うけれど、それは確かにミッキーマウスの目覚まし時計だった。
 「この目覚まし時計には、魔法がかけてあるんだ。どんな魔法かは、奈奈がよく知ってるよね。約束するよ。もし何もいいことがなかった日には、俺が魔法の代わりに奈奈を笑顔にする」
プロポーズされた時よりも、指輪をもらった時よりも私は泣いた。そしてふたりで笑った。
 夫がかけてくれた笑顔の魔法は、今も解けていない。

       2017年度「愛顔(えがお)感動物語」(県主催)一般の部知事賞
理想の男性像
                 産経新聞 夜明のエッセー
                 平成30年3月10日

 私の家は外で働く父と、専業主婦の母、大学生の姉と私の4人家族だ。両親は結婚して21年になる。


 家族構成と形態はごく普通だと思っているが、私の家族はほかの家族とは違うのではないかと思うことがある。それは父の、家族に対する、特に母に対する愛情が尋常ではないのだ。

 たとえば、母が忙しくて夕食が全てできあいのものでも、父は必ず「おいしかった。ありがとう」と母にひと言言うのを忘れない。また、母が何か作業をしているときには、甘いものの差し入れを欠かさない。母の代わりに買い物を引き受けることも多い。

 もちろん,私たち姉妹に対しても、出かけるときの送り迎えや、好きなスイーツの差し入れを頻繁にしてくれる。父は「家族サービスマン」なのである。

 なぜ、父の行動について述べたのかというと、私たち姉妹には全くもって反抗期というものがなかったことに気がついたからだ。学校から帰った後も自室にいることはなく、家族との団らんがずっと続く。

 周囲の友達が言う「父親の洗濯物と自分のものは一緒にしてほしくない」といったような話も、わが家では無縁で、なぜ嫌悪感を抱くのかがわからない。

 今まで気づいていなかったが、家族の平和は父によって保たれていたのだ。また、父の影響ではないかと思えることがもう一つある。それは私のとった行動に対して、「よく気がつくね」とお褒めの言葉をいただくことが多いことだ。

 それは、父が私たち家族にしてくれるように、人に気遣いをもって接することを無意識にしているからだと気がついた。父に直接言うことはないが、私は将来、父のような人と結婚したいと心から思っている。

松尾佳奈(17)
高校生 兵庫県姫路市