手紙 〜 夜明けのエッセー
     手紙
               山下幸子(84) 大阪府岸和田市 
 
 
 知之、50歳のお誕生日おめでとう。

 お母さんの不注意から、四肢身体障害者になり、神様参り、病院参りの毎日に何度も一緒に死のうと思ったけれど、お母さんに一度も愚痴を言わず、不自由な体で勉強して、「電気」「保全」「保守」という大切な職務につき、社長さんや社員の方々に親切にしていただき、お母さんは喜んでいます。
 
 同じ高校で片半身に障害のある優しい女性と結婚して、今年22歳になるたくましい息子に恵まれて、毎年車で旅行に4人で全国を廻り楽しい日々を過ごさせてくれましたね。本当に生きていて良かったと思います。

 ボケ防止にと「パソコン」「タブレット」「スマホ」と3人で手を取って教えてくれました。おかげで友達に「この年でインターネット?」と言われます。

 でもこの頃、少し疲れてきたようですね。頭と体が一致しないですか。

 知之も、もう50歳です。その体で一家の大黒柱として走り続けてきた人生、残りの人生は、ゆっくり歩いて過ごしたらどうですか。たまには、負けん気も、頑張りも忘れる日があってもいいと思いますよ。お母さんの子供に生まれてくれてありがとう。

 自慢の息子知之へ
                       30.7.25 産経新聞